トップページ コラム/レビュー 東京レコード散歩 東京レコード散歩 その⑭ 高円寺

東京レコード散歩 その⑭ 高円寺

東京レコード散歩 その⑭ 高円寺

文/鈴木啓之 (アーカイヴァー) 

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日本のインドと呼ばれた高円寺、といえば純情商店街

バンド・ブームを背景にしたみうらじゅんの自伝的漫画「アイデン&ティティ」の舞台となった高円寺。未読だが村上春樹の「1Q84」にも登場するらしい。かつて日本のインドと呼ばれた街は、駅の北側・南側併せて10以上の商店街が広がり、雑多でどこか懐かしく、妙に居心地のいい雰囲気を醸し出している。最近では古着屋さんなども増え、女子率も高めの侮れない街なのだ。それを意識したわけではないけれども、今回も中野に続いて辣腕女性プロデューサーH嬢が同行しての散歩となった。

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この辺りに新星堂があったはず

駅の北口を出て左前方奥に入口のアーチがかかる“高円寺純情商店街”は、以前は“高円寺銀座商店街”という名だったが、直木賞を獲ったねじめ正一の小説を機に改名された。まだ名が変わって間もない頃、偶然にもアーチの真ん前で知り合いと立ち話をするねじめさん夫妻を見かけたことがある。写真を撮らせて下さいと申し出ようかとずいぶん迷った末、結局言い出せなかった。こういう話はやっぱり物的証拠がないと信じてもらえませんよね。勇気を出して頼めばよかった。そのすぐ手前、駅前広場には新星堂のレコードショップが長らくあったが今はもう無くなり、飲食のチェーン店に替わっている。同店はその後昭和歌謡やフォークに特化した専門店「高円寺レコード」をパル商店街に開いたが、それも5年ほど前に閉店してしまった。少しだけ早過ぎた試みだったのかもしれない。

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高架下にある老舗古本屋

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二カ月に一度イベントでお世話になる円盤

DSCN0981JRの高架下、アジアン雑貨屋さんの隣には、老舗の中古レコード店「レア」の高円寺店が今もある。ここでの大物確保の記憶はあまり無いのだが、均一台やカセットテープの拾いものなど、昔からずいぶんとお世話になっている。高架下をさらに荻窪方面に進むと古本屋さんがあり、通りすがりに外の均一棚を眺めるのは小さな楽しみ。この日は三月書房の函入り本、戸板康二「わが交遊記」があったので100円で買う。そこから線路沿いの道に抜けるとすぐ、知る人ぞ知る喫茶店&レコード店&ライヴスペースの「円盤」が現れる。店主の田口史人さんはレーベルを主宰したり、復刻CDを監修したりと多方面で活躍されている有名な御仁。氏が各地で開催している「レコード寄席」は音盤への愛に満ち溢れていて好もしい。私も隔月で毎回テーマを決めてレコードをかける催しでお世話になっているが、昼間ここを訪れたのは初めてではないか。いきなりの訪問で田口さんは不在だったが、店の人にお願いして写真を撮らせていただいた。一旦駅前まで戻ったところで、「ラジオ歌謡選抜」の相方、長井英治さんがさらに合流。いつものT氏との静かな2人散歩の倍、珍しく4人での賑やかな行脚となる。

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「ヨーロピアンパパ」は定休日。迷子になった飼い猫・ウェンディちゃんは無事帰宅したそう

今日のひとつの目的として、けい子とエンディ・ルイスというグループのシングル「中野・阿佐ヶ谷・高円寺」のジャケットに写る八百屋さんが高円寺の店らしいので見つけてやろうという企てがあった。しかしいくつかの商店街を歩いたがどうしても見つからない。半ばあきらめて庚申通り商店街をずんずん進むと、新しくオープンしたばかりの古本屋さんを偶然発見。ご祝儀代わりにお洒落切手の本を一冊買った。女性店主らしいキレイな店内で、値付けも良心的。末永く続けて欲しい。早稲田通りまで出て、今度はあづま通り商店街を駅方面へ戻る。途中にある中古盤店「ヨーロピアンパパ」は定休日だったらしくシャッターが下りていた。少し前にツイッターでここの飼い猫・ウェンディちゃんが行方不明になったという拡散ツイートを読んで心を痛めていたが、どうやら無事戻ったらしく、シャッターにもその報告が貼紙してあった。よかったよかった……。その先には以前よく通ったレコード店「THE55」があったが、既に閉店して久しい。さらに駅近くにはマニアックな品揃えの本屋さん「高円寺文庫センター」や、カルトな作品が揃うレンタルビデオ屋さんなどもあったのだが、いずれも閉店してしまった。件の八百屋さんももう無いのだろうか。時は巡り、街はいつの間にか移り変わってゆく。

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かつてエトアール劇場という映画館があったエトアール通り

再び高架を潜って、アーケードのあるパル商店街を歩く。この辺は高円寺で一番人通りの多い場所だろう。最も駅寄りに位置するカバン屋さんには、とてつもない美人店員さんがいるという噂があるので、ご興味のある向きはぜひ。その際は冷やかしでなく、必ず何か買い物をして下さいね。そのまま進むとルック商店街となり、やがて青梅街道に行き着くが、今日は途中で交差するエトアール通りを右折。通りの名はかつてエトアール劇場という映画館があったことに由来するそうで、その位置を寡黙そうな米屋さんのご主人に尋ねたところ、「今、西友になってるとこ」とボソッと教えてくれた。これは予想通りで、中野と同じケース。映画館は敷地が広いので、跡地にスーパーが建つというパターンは多そう。昔は中野にも高円寺にも映画館があったのに、今や中央線は吉祥寺まで行かないとロードショー館は無いのがちと寂しい(名画座では「ラピュタ阿佐ヶ谷」があり、よく練られたプログラムで熱心な映画ファンに愛されている)。余力があれば青梅街道沿いの新高円寺や東高円寺も歩きたかったところだがいささか疲れてしまった。

車の通る広い高南通りを駅南口方向に戻り、スイーツ部の長井氏や私の愛してやまない洋菓子店「トリアノン」の喫茶室を今日の散歩の終息地とすることにした。看板の文字の昭和度からして堪らない老舗。ショートケーキやアップルパイといったベーシックなラインナップに安堵しながら、紅茶とロールケーキを食す。結構歩いたので甘いものが身に沁み渡る。甘党の観点では、美味しいケーキ屋さんのある街は絶対にいい街と決まっている。では最後にクイズを。荻窪にも阿佐ヶ谷にも中野にもあるが高円寺には無いもの。それはなんでしょう?・・・・・・正解は“スタバ”でした。

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1960年から続く老舗洋菓子店「トリアノン」

trs14 高円寺

高円寺/よしだたくろう(昭和47年)
若き日、高円寺に住んでいたという吉田拓郎の隠れた人気ナンバー。初期のアルバム『元気です。』に収録された短い曲。高円寺とフォークの相性の良さはこの曲に端を発するのかも。

trs14 中野・阿佐ヶ谷・高円寺

中野・阿佐ヶ谷・高円寺/けい子とエンディ・ルイス(昭和50年)
ピンキーとキラーズのメンバーだったエンディとルイスに、ボーカルのけい子を加えたグループ。けい子さんはなかなかの美人であります。「週刊平凡」公募の詞に平尾先生が作曲。

trs14 ボブ・ディラン

アイデン&ティティ Soundtrack/ボブ・ディラン(平成16年)
映画『アイデン&ティティ』の最後に流れる「ライク・ア・ローリングストーン」をはじめとするディラン・コンピ。みうらじゅんが選曲した『DYLANがROCK』というアルバムもある。

trs14 アイデン&ティティ

アイデン&ティティ/オリジナルサウンドトラック(平成15年)
みうらじゅんの漫画を原作に、宮藤官九郎脚本、田口トモロヲ監督で映画化された際のサントラ盤。音楽は白井良明、遠藤賢司、大友良英。主演の峯田和伸の歌が多数収められている。

trs14 ぞめき 壱

ぞめき壱 高円寺阿波おどり(平成22年)
高円寺といえば阿波踊り。徳島が本場の盆踊りは東京でも50年以上続き、毎年夏の終りに多くの人が集まる。その偉大なリズムと歌を久保田麻琴が録音に収めた実況盤シリーズ。

trs14 高円寺ラブサイン

高円寺ラブサイン/みちこ&けんじ(平成24年)
サザンクロスの生田目章彦作によるノリのいいデュエットナンバー。高円寺のムード歌謡は意外と珍しい。プロフィールによれば駅近くでカラオケ喫茶を経営されているとのこと。

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東京レコード散歩 記事一覧

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プロフィール

鈴木 啓之

鈴木 啓之(すずき ひろゆき)

アーカイヴァー。昭和40年東京生まれ。テレビ番組制作会社に勤務の後、中古レコード店経営を経て、ライター及びプロデュース業へ。昭和の歌謡曲、テレビ、映画について雑誌などへの寄稿、CDやDVDの監修・解説を主に手がける。著書に『王様のレコード』(愛育社)、『昭和歌謡レコード大全』(白夜書房)など。現在、月刊てりとりぃ誌に「古書とスイーツの日々」を連載。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』にレギュラー出演中。

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