トップページ コラム/レビュー 東京レコード散歩 東京レコード散歩 その⑲ 池袋(後篇)

東京レコード散歩 その⑲ 池袋(後篇)

東京レコード散歩 その⑲ 池袋(後篇)

文/鈴木啓之 (アーカイヴァー) 

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池袋きっての歓楽街ロマンス通り

DSCN1972立教大学を後にした我々は、裏道を抜けて、西池袋公園のすぐ横にある中古レコード店「ココナッツディスク」に立ち寄る。吉祥寺や石神井公園、代々木にも支店があるこちらのお店は、常に若いスタッフ、内装も垢抜けていてお洒落。以前、2階がレコード売場だった頃は引き出し式のシングル盤の餌箱を隈なく見るのが一苦労であり、かつ愉しい作業でもあった。今は1階にコンパクトに纏めランキングれているので、掘り出し感こそ薄れたが見易いのはたしか。ちなみに並びのカレー屋さん「GARA」も美味でサービスが行き届いておりオススメだ。この辺りはなぜかカレー屋さんが多い。東口のジュンク堂のすぐ横にも店舗のある洋食屋さん「ABC」の西口店もすぐ近く。ハンバーグに生姜焼き、何を食べても旨いのだが、さすがにこの歳になるとライスを小盛にしてもらわないと食後に後悔する。完全に学生向けの名店である。

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1968年に竣工オープンのランドマーク

マルイのある交差点まで戻る。要町通りと交わる道をしばらく直進すると、裏通りに「スナック馬場」がある。オーナーであり、自らを”狩猟家”と称する若きレコードコレクター・馬場氏が週末の夜だけ開けているミュージックバーで、氏の出張DJの際は閉まっていたりするため、タイミングが合わないとなかなか訪ねられない。しかし店ではオーナーがアジア圏で買い付けてきたレアモノなど、選りすぐりのレコードが最高の音質で聴ける贅沢な空間…なんて、あまり宣伝されるのは好きではないかもしれない。お赦しあれ。今日は昼間なのでそちらには向かわず、交差点からすぐ、通りの右側に聳える巨大な古いビル「ロサ会館」に寄ることにした。通りから見えるビルの壁には、”ボウリング、ビリヤード、レストラン、ディスコ、シアター、テニス、ゲーム”と付帯施設が判りやすく記されており、いかにも昭和の風情が醸し出されている。昭和43年創業という娯楽の殿堂、1階にある洋食店「チェック」は、先頃惜しくも鬼籍に入られた東宝の俳優、小泉博さんが経営している店だと、高校時代の先輩から教わった。カウンターの片隅に座っているのを目撃したこともある由。我々の世代には『クイズ・グランプリ』の司会でもお馴染み、見事な銀髪でダンディな俳優さんであった。『三大怪獣地球最大の決戦』などの特撮作品での活躍が忘れられない。学生時代、毎日池袋に来ていたのにここでボウリングをした記憶はない。池袋でのボウリングは専ら東口のハイパーレーンだったため。1階エレベーター横にあったボウリングと居酒屋がパックになったプランのチラシが時代を物語っていた。

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ロサ会館1階にある老舗洋食店チェック

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通い慣れた「文芸坐」

いつも人で賑わうロマンス通りを抜け、和菓子の三原堂の健在を確認しつつ、北口横の地下通路で東口に向かう。 ピーダッシュパルコの前を通って路地を入ると、通い慣れた「文芸坐」への道。今は1階がパチンコ店の綺麗なに入っているが、旧建物は風情がある昔ながらの映画館であった。松林宗恵監督がゲストで来館し、「社長」シリーズをオールナイトで観たことを思い出す。学生時代は付帯していた小さな名画座「文芸地下(後に文芸坐2と改称)」の方が常連で、特撮映画の特集などをよく観にいった。小劇場「ル・ピリエ」も懐かしい。映画関連の書籍や資料を揃えていた「しね・ぶてぃっく」にも必ず立ち寄り、古いパンフレットなどを物色したものである。映画館では近くにあった日勝文化という二番館にも何度か行った。チラシブームの頃、チラシを販売するコーナーが設けられていたと記憶する。近くの豊島区民センターなどでのレコードフェアを主催している中古レコード店「だるまや」の店舗は前の場所から移転したが、やはりこの近くで盛業中。歌謡曲好きにとっては、時々意外な掘り出し物に出逢える店で、一時期はプロモ盤をずいぶん安く買わせてもらった。

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駅前の老舗洋菓子店タカセは今も健在

再び駅方面まで戻る。昔はパルコの中にそれは素晴らしい品揃えの「オンステージヤマノ」という山野楽器が運営するレコード店があり、他店では手に入らないサントラの輸入盤を買ったりしていた。主にロック・ポップスをメインにしつつも、洋楽オンチの自分にとっても充分に楽しめる、実にマニアックでアッパレなラインナップであった。後の「WAVE」の前身、西武デパート内の「ディスクポート」にもよく行った。東口は駅前の洋菓子店「タカセ」はずっと健在なのが嬉しい。2階のティールームは今も時々利用させてもらっている。なお、店名は人の名前ではなく、創業者の出身地の町名から付けられたとのこと。以前は隣に移転後の「レコファン」池袋店があったが、上の階に移った後に残念ながら閉めてしまった。その代わりといっては何だが、並びのビル4階に「ディスクユニオン」池袋店がある。いつも人で賑わうサンシャイン通りはそこからすぐ。通りに入ってしばらく、右方向には今から7年前に姿を消した人世横丁という飲み屋街があった。今も残る美久仁小路と共に「池袋の夜」の歌詞にも登場する同地には「グレー」という、ゲイバーの草分け的な店があり、江戸川乱歩や美輪明宏が常連だったという。現在大きなオフィスビルが建っている跡地には、“あなたの心に横丁がありますか”と書かれた碑が立てられている。

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アイドルのイベントで有名なサンシャインの噴水広場

サンシャイン通りにかつてあった「テアトル池袋」は、昔の東宝映画のオールナイト上映に足繁く通った。昭和50年頃、「若大将」シリーズのオールナイトで火が付き、新たな加山雄三ブームが興ったのもここが発祥だったのだ。ひばり・チエミ・いづみの「三人娘」の特集上映の際には雪村いづみがお忍びで来館し、懐かしげにスクリーンを見つめていらしたが、そんな時に限って途中でフィルムが切れて上映が中断してしまうトラブルがあったことを想い出す。今は「池袋HUMAXシネマズ」となり、同建物に入っているブックオフに立ち寄ることが多い。東急ハンズのすぐ横はサンシャインシティへの入口。地下通路を進むと噴水広場が見えてくる。いつもイベントが行われているスポット、この日はアルスマグナという男性グループが歌っていて、若い女性ファンでいっぱい。すぐそばの催事場では少し前まで定期的に中古レコード市が開かれていて、かつては必ずチェックしに来ていた。サンシャイン60の開業日には学校帰りに友人たちと訪れ、行列して展望台に上ったことを憶えている。それが78年4月6日という日にちまで明確なのは、後楽園球場でのキャンディーズ解散コンサートの翌々日だったという記憶が鮮明だからである。何年か前にリニューアルされたサンシャイン水族館(旧サンシャイン国際水族館)は、ラッコやウーパールーパーをスターにしたことで知られる。未だ訪れたことはないが、今度ゆっくりクリオネやピラルクーを見に来たいと思う。

そして今回の散歩の最後は、「新星堂」のサンシャインシティアルタ店。以前はもっと駅寄りの2階にあったが、いつの間にか1階の少し奥まった場所に移転していた。店の一角はアイドルのイベントが行われるスペースになっており、様々なアイドルグループのポラロイド写真が貼られている。辛うじて維持されているCD産業を、今のアイドルたちが少なからず支えている現状は、新譜を扱うレコード店を訪れる度に実感させられることだ。駅に戻る道すがら、再び噴水広場の横を通った瞬間、35年前の9月にここで行なわれた三原順子のデビュー発表会に参加したことを想い出して胸が熱くなった。

trs19+池袋の夜(EP)

池袋の夜/青江三奈
(昭和44年)※コンパクト盤
前回シングルのジャケを紹介したので、コンパクト盤も。青江の姿は相変わらず合成だが、バックの東口の風景は同じポジショニングながらも、シングル盤とは異なる写真を使用。

trs19+池袋ブルース

池袋ブルース/聖名川まち
(昭和44年)
ベリーショートのまち姐が歌う池袋の夜。自主盤ながら青江三奈より先に出されているので便乗ソングではない。台詞入りのB面「池袋西東」が揮っている。ジャケはなんと2種有。

trs19+ブルー・ナイト池袋

ブルー・ナイト池袋/三浦正弘とアロハ・ブラザーズ(昭和44年)
後の三浦弘とハニーシックス。一部で有名な「ラリラリ東京」に続いて出されたシングル。これも「池袋の夜」より前の発売なので、便乗ではありません。クラブ・ソシアルにて撮影。

trs19+池袋ナイト

池袋ナイト/谷俊之と東京ナイツ
(昭和49年)
夜の池袋が歌われたムードコーラス盤をもう一枚。メインボーカルは女性のすがゆうこ。サックス奏者のリーダー・谷俊之が自ら作曲している。東京出身者はメンバー6人中2人だけ。

trs19+黒蜥蜴の唄

黒蜥蜴の唄/丸山明宏
(昭和43年)
現在の美輪明宏が丸山明宏を名乗っていた頃の一枚。かつて“シスターボーイ”と呼ばれた美少年が足繁く通った人世横丁のバー「グレー」には、沖雅也もよく顔を見せていたらしい。

trs19+ウーパー・ダンシング

ウーパーダンシング/ウーパールーパー&チェイン(昭和60年)
テレビ番組で紹介されたのをきっかけに人々がサンシャインの水族館に殺到し、ブームが拡大することとなった。作者の尾崎亜美が「パピ」名義で自ら歌う競作盤も出されていた。

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東京レコード散歩 記事一覧

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プロフィール

鈴木 啓之

鈴木 啓之(すずき ひろゆき)

アーカイヴァー。昭和40年東京生まれ。テレビ番組制作会社に勤務の後、中古レコード店経営を経て、ライター及びプロデュース業へ。昭和の歌謡曲、テレビ、映画について雑誌などへの寄稿、CDやDVDの監修・解説を主に手がける。著書に『王様のレコード』(愛育社)、『昭和歌謡レコード大全』(白夜書房)など。現在、月刊てりとりぃ誌に「古書とスイーツの日々」を連載。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』にレギュラー出演中。

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