トップページ コラム/レビュー 東京レコード散歩 東京レコード散歩 その㉑ 吉祥寺

東京レコード散歩 その㉑ 吉祥寺

東京レコード散歩 その㉑ 吉祥寺

文/鈴木啓之 (アーカイヴァー) 

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東京の住みたい街ランキング上位のる吉祥寺。憩いの場、井の頭公園

ここ何年もの間、東京の住みたい街ランキングの上位を維持している吉祥寺。かつては常に1位であったと記憶する。たしかに商店街は充実しているし、閑静な住宅街は駅近だし、井の頭公園があるので自然も豊か。文化の香りのする文教地区でもある。駅はJR中央線だけでなく、京王井の頭線の始終点でもあり、新宿にも渋谷にもアクセスしやすい。そして何より、古書店や中古レコード店事情も悪くないところが個人的には高評価なのだ。楳図かずお、江口寿史両先生も住まわれており、漫画家にも愛される街。初秋の一日、いつも通り活気に満ちたジョージタウン(死語?)を歩く。

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飲食店の立ち並ぶ狭いバス通り。かつては中古レコード屋も多かった

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中古レコードの老舗RARE

ずっと工事中だった駅は先頃ようやく整備が終わり、綺麗に生まれ変わった。いくら昭和好きでも、こういったインフラが重視される場所に関しては、昔の方がよかったなどとは言わない。利便性の向上は大いに結構なことである。井の頭口のエスカレーターを下りて狭いバス通りへ。飲食店が並ぶ中、古本センターのあるビルの2階に、かつて「ディスクオーツカ」という中古屋さんがあった。決して安い値付けではなかったものの、マメに覗いていると結構なレア盤に巡り会えることも多く、吉祥寺のレコードハンティングの起点はいつもここだった。木造りのレコード棚が懐かしい。現在は通販専門で営業されている様子。さらに進んで井ノ頭通りと交わる直前、通りの入口には、以前は「ジョージ」だった「レア」の吉祥寺店がある。ここも長くお世話になっている店で、ジョージ時代はいつも客が多く、随分といい買い物をさせてもらった。閉店の際のセールは本当に投げ売りだったそうで行けなかったのが悔やまれる。この日も初めて見るムードコーラスの自主盤を一枚買えて満足。こういう他人には決して羨ましがられない、あくまでも私的な収穫が一番愉しい。

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オシャレな店構えのココナッツディスクの吉祥寺店

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高田渡も常連だった焼鳥屋「いせや」

井ノ頭通りをしばらく歩いて、「ココナッツディスク」といういつものコース。その途中にある駐車場は、昔はショッピングモール「ロンロン」のそれで、家族で吉祥寺を訪れた際にいつも利用していた。右手にヴィレッジバンガードのカフェが見えたら、そのすぐ向かいの路地を入ったところがココナッツディスクの吉祥寺店。こちらのお店のロケーションの素晴らしさは、行ったことはないが西海岸にあるレコードショップはこんなだろうという洒落た造りで、番組のロケなどにもよく使われている様子。ここならレコードに興味のない女子を連れていってもきっと怒られないんじゃないか。こちらでもシングル盤とLPを何枚か買ってから、駅方面に少し戻って井の頭公園を目指すことにした。伝説の吟遊詩人・高田渡も常連だったという有名な焼鳥屋「いせや」を右に見ながら道を進み、洒落た佇まいのフランス料理店「芙蓉亭」の前の道を斜めに折れると、公園のエリアに入る。道の途中にあった、昔、父親と一緒によく訪れた珈琲店は既に失くなっていた。公園のほとりにある「和歌水」は大人の休憩所、つまりラブホテルで あろうが、かなりの年季を感じさせる古風な建物で若いカップルは足を向けないだろう。看板を見ていたら往年の喜劇女優、若水ヤエ子の顔を思い出してなんだか可笑しくなってしまった。

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井の頭公園の野外ステージ。「ガラスの仮面」にも登場する

井の頭公園といえば、デートで来たカップルが別れるという都市伝説が有名だが、そんなことより、自分たちの世代にとってはやはり青春ドラマ『俺たちの旅』の舞台になった聖地ということに拘りたい。お馴染みの噴水は今も変わらず、池に架かる橋を渡っていると、自分が中村雅俊になった様な気がしてくる。ブランコを漕ぐ岡田奈々の可憐な姿が想い浮かび、耳の奥では小椋佳が供した主題歌「俺たちの旅」と「ただお前がいい」がグルグルと回る。これだからロケ地巡りはやめられない。ちなみに彼らが住んでいたアパートは杉並区方南にあって以前見に行ったことがあるが、今は解体されてしまったそうで残念。二度と見ることが出来ない失われた風景を想うと切なくなる。少女まんが「ガラスの仮面」にも登場するという野外ステージの横の緩やかな階段を通って公園エリアを脱し、以前に仕事で訪れたことがあるという同行のT氏の案内で、噂高き楳図かずお邸を目指す。しばらく歩くと、閑静な住宅街の中に赤白ツートーンの可愛らしい家が現れた。庭の木々に隠れているせいかそれほど目立たず、高台に建っていることもあって、教えられなければ気づかずに通り過ぎてしまう感じ。楳図先生の漫画はリアルタイムでは「まことちゃん」や「漂流教室」世代であるが、後追いで読んだ作品では「ウルトラマン」が好き。一峰大二版とはまた違った魅力がある。それにしても恐怖漫画が多かったあの画風のために、ギャグ漫画の「アゲイン」にしても「まことちゃん」にしても、なんだか無性に怖かった。ギョエーッ!

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赤白ツートーンの可愛らしい楳図かずお邸

再び井ノ頭通りに戻り、駅方面に向かう途中にある古書店「よみた屋」も吉祥寺に来る度に立ち寄る店である。充実した店内の棚もさることながら、ここは店頭の均一棚が面白い。特に結構古い新書や文庫が充実していて、来ればだいたい必ず何か買うものがあるのが常。この日もまた、早川書房のポケミス(ポケットミステリー)とカッパブックスの未所持だった古いタイトルが安かったのでつい買ってしまい、バッグがどんどん重くなってゆく。いつものことながら、今回は特に買い物が多い散歩となった。駅前広場を経て、吉祥寺の賑わいの中心ともいえるアーケード商店街のサンロードに入り、少し先を左折すると、「ディスクユニオン吉祥寺店」がある通り。これまた寄らずにはいられない。そしてまたもや買い物を少々。以前は名古屋が本拠地の「パナナレコード」もこの通り沿いのビルの2階に出店していたり、近くのプチロードに神保町「トニイレコード」の支店があったり、さらにはレンガ館の4階には「レコファン」もあるという、ちょっとしたレコード店の密集ゾーンであったが、現在でも残っているのはユニオンだけである。吉祥寺で今は失きレコード店といえば、輸入盤専門店の芽瑠璃堂を忘れちゃいけない。後に渋谷に店を構える前、吉祥寺の中道通りで昭和49年にオープンしたという。当時は小さな店ながら、まだ珍しかった輸入レコード店には多くの人々が訪れ、正に伝説的な店であった。その後、原盤制作を行なうインディーズレーベルの草分け、ヴィヴィド・サウンドへと発展するが、10年程前に原点回帰で芽瑠璃堂もオンラインショップとして復活し現在に至る。青山のパイドパイパーハウス同様、吉祥寺時代の芽瑠璃堂を知っている人はかなり古くからのレコード好きといえるだろう。

trs21+俺たちの旅

俺たちの旅/中村雅俊(昭和50年)
青春ドラマの傑作『俺たちの旅』の舞台となった吉祥寺は、ファンにとっての聖地なのだ。井の頭公園には当時のままの風景がいっぱいで想い出に浸れる。男はみんな淋しいのです。

trs21+懐しのジョージ・タウン

懐しのジョージ・タウン/中原理恵(昭和55年)
デビュー曲「東京ららばい」から続いていた、松本隆=筒美京平コンビによるシングルの第7弾。“浮かれすぎた季節の街”と表現された吉祥寺の夜には、寂しい女がなぜか似合う。

trs21+ジョージタウン+ララバイ

ジョージタウン ララバイ/今井 久とパープルシャドウズ(昭和56年)
「小さなスナック」の大ヒットで知られるGSバンドが復活しての新曲。吉祥寺がジョージタウンと呼ばれたのはこの頃の流行りだったろうか。曲は80年代初頭らしいAOR調。

trs21+ウ・ラ・ギ・リ・マ・ス

ウ・ラ・ギ・リ・マ・ス/横田早苗(昭和58年)
セカンド・シングルのB面曲。吉祥寺のYesterdayで出逢った友達の恋人を好きになるという、微妙な三角関係が描かれる。58年デビュー組の彼女は東京・中野生まれの浜松育ち。

trs21+2人の吉祥寺

2人の吉祥寺/シルビア(昭和61年)
秋元康の作詞による不倫ソングは、「さつま小鶴」という焼酎のCMソングだった。赤坂や六本木で浮名を流した後に辿り付いた大人の女の行先は吉祥寺であった。作曲は三原綱木。

trs21+井の頭公園

井の頭公園/山本ゆかり(昭和63年)
59年に中森明菜の妹分として研音から売りだされた山本ゆかりは、「ギンギラ御嬢」などツッパリ路線も歌った。秋元康=見岳章コンビの作による6枚目の本曲がラストシングルに。

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東京レコード散歩 記事一覧

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プロフィール

鈴木 啓之

鈴木 啓之(すずき ひろゆき)

アーカイヴァー。昭和40年東京生まれ。テレビ番組制作会社に勤務の後、中古レコード店経営を経て、ライター及びプロデュース業へ。昭和の歌謡曲、テレビ、映画について雑誌などへの寄稿、CDやDVDの監修・解説を主に手がける。著書に『王様のレコード』(愛育社)、『昭和歌謡レコード大全』(白夜書房)など。現在、月刊てりとりぃ誌に「古書とスイーツの日々」を連載。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』にレギュラー出演中。

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