トップページ コラム/レビュー チェリーの歌謡曲ワンダーランド おとぎの国へ連れてって? 「リトル プリンセス」 岡田有希子シリーズ・顔で笑って心で泣いて~その1

おとぎの国へ連れてって? 「リトル プリンセス」 岡田有希子シリーズ・顔で笑って心で泣いて~その1

おとぎの国へ連れてって? 
「リトル プリンセス」 岡田有希子
シリーズ・顔で笑って心で泣いて~その1

文・資料/チェリー 

yukiko_top日常よく使うことわざとして
顔で笑って心で泣いて
というものがある。

これは”泣きたいほどつらくても、顔では笑って見せること”という意味になるが、おそらく誰しもが身に覚えのある状況なのではないかと思われ。

過去の歌謡曲シーンをふりかえると、このような気持ちで歌番組に出演していたのでは?とおぼしき方々の顔がチラホラと浮かんでくる。その内のひとりとして思い起こされるのが、80年代アイドルの岡田有希子嬢であり、楽曲は「リトル プリンセス」となる。以降は親しみをこめ、ユッコと書かせていただくことにする。

本楽曲が発売されたのは1984年7月18日。時期としては夏休み直前といった候。地域差は多少あったにせよ、日本全国的にそういった頃のことになる。この時代の筆者といえば、もぎたての果実のような高校生。と、よくもまぁ、恥ずかしげもなくそんなことを…と嘲笑気味な方もゾロリ?なにはともあれ、臆することなく進めさせていただくことにする(笑)。だからといって、今は”ひからび”が進みまくり、少量の水を与えたくらいじゃ吸収しやしねぇ!という末期状態には至っておりませぬ…多分。

それはさておき、この年の夏はどのような天候だったのか? 記憶の糸をたぐってみれば、太陽がギラギラした夏らしい夏だった場面が思い浮かぶ。といったところで、そんなものは「夏」の典型的なイメージにすぎないのでは?それに、人の記憶ほど曖昧ものはないと言われるがゆえ(笑)、きちんと調べてみることにした。その調査によれば”高温少雨”という表記が見て取れたのである。ヤッタ…我ながらアッパレのご名答? アソコの能力は、まだまだハッスル可の状態であることを再確認できたのである! 但し、それはあくまでも”脳”に関する話となるので誤解のなきよう(笑)。
さて、本作「リトル プリンセス」はデビュー曲「ファースト・デイト」に続き、竹内まりや氏が作詞・曲の両方を手がけた2ndシングル。次作「-Dreaming girl- 恋、 はじめまして」も同氏の作品だったことから、それら3曲はユッコの”学園恋愛三部作”と呼ばれていたりもする。

3曲を通して聴いてみると、女の子の成長過程を淡く繊細なタッチで描く…少女まんがの珠玉連載でも読んでいるかのような気分になる。頬がゆるむほどに可愛らしく、少女らしい清らかな世界がそこに広がっているのである。やや美化しすぎかナ?と思われる部分もあるにはあるのだが、そこはアイドル歌謡だもの。「美」を徹底的につらぬきまくる姿勢でよろしいのかと。

ユッコのデビューに際しては、明るい曲調やそうではないものも含め、数曲が用意されたと聞く。これは三部作を担当した竹内氏による後日談でも見て取れる。古き良き、英米のポップスにはひときわ思い入れの深い竹内氏。それはユッコ提供曲においても顕著になっている。

例えば、デビュー曲には”デイト”や”シネマ”という単語が使われ、3rdでは主人公の”ママ”が登場する。いずれもオールディーズの、シュガシュガなドリーミンポップにて多用されたモチーフである。そして「リトル プリンセス」においては、サウンド面にてそれを踏襲。いわゆる、スペクター風*サウンドである。本曲「リトル プリンセス」ではそれらしい装飾は控えめになってはいるものの、主体となっているリズム体はまさにそれ。このあたりは、編曲を担当した大村雅朗氏の判断によるものだったはず。

*スペクター風とは:1960-70年代の米国ミュージックシーンで活躍した、フィル・スペクター氏が生み出した音楽。厚みのある音作りとエコー処理を施すことで出来上がる独特のサウンドは、音壁(ウォール・オブ・サウンド)と呼ばれた。単にスペクター、またはスペクターサウンドと呼ばれることもある。ロネッツのヒット曲「Be My Baby」(1963年)に見られるような、♪ダンッダダン~と刻むリズムが人気を博した。スペクター氏を尊敬した大瀧詠一氏は、そのサウンドを独自発展。後にナイアガラサウンドとして親しまれることになった。

yukiko2『リトル プリンセス』|テーマ

ファースト・デイトに誘われたものの、「気まぐれでしょ?」と戸惑った少女のステップアップがここに。恋人気分で腕につかまり、一緒に歩くのを夢見てた…それが待ち合わせの遊園地で現実のものとなる。も~好き好き好きの夢ン中!このまま”おとぎの国”へつれてって~私はあなたの”リトル プリンセス”なの♡という、可愛らしさにとことんズームインしたメルヘン歌謡。

『リトル プリンセス』|聴きどころ

1:ユッコ本人も「照れる!」と言及した、愛らしい歌詞
2:ダンッダダン!軽めのスペクター風サウンド
3:サビ前、見事な転調技を見せるまりやメロディー
4:丁寧で味わい深いユッコの歌声

曲のキャッチフレーズ|もう、キミしかみえない

スペクター風は当時の歌謡曲、特にアイドルポップスとの相性が良く、数多くの楽曲に宛がわれた。それこそ当時のム・ス・メ世代の歌手ならば、、一曲や二曲くらいは♪経験ずみよ~?該当しない方もいたとは思うが。
そして「リトル プリンセス」がデビュー曲候補になっていた形跡も、こんなところで見て取れる。アイドル歌謡マニアの方にとってこの話題は、”ここだけの話~オフレコ~”どころか”今さらジロー”だろうけれども。

いつまでも、一緒にいてね。
ステキの国からやって来たリトル・プリンセス
(注:ルとプの間に「・」が入る)

これらはユッコ本体に付けられた、デビュー当時のキャッチフレーズ。彼女はWキャッチフレーズの持ち主だったのだが、内1つには表題曲の題名が使われていた。このような事例はユッコのみならず、他アイドル歌手においても存在。

宇沙美ゆかり ときめきタイフーン
本田美奈子 好きと言いなさい!

いずれも、本体用キャッチフレーズとして使われ、かつ楽曲も存在するという例。それぞれデビュー曲候補として名を連ねていたものの、最終的にはB面へ回されたり、2ndシングルとして発売。アイドル歌手デビューのプロジェクトにおける、試行錯誤や紆余曲折は、こんなところからも垣間見ることができるのである。
「リトル プリンセス」がデビュー曲から脱落した理由は? インパクトの不足? たしかにテンポがゆったりめで、サビまでの間が長い。新人歌手の場合、当時の歌番組では1コーラス、よくて1ハーフが持ち歌の配分時間。このため”ツカミ”を優先に考えたら、デビュー曲としては弱いと判断されたのかもしれない。個人的には良く出来た曲だと思うし、とても”好きよ”な楽曲なのだが。また、この曲以外にも「子羊NOTE」や「二人のブルー・トレイン」などが、それの候補として挙がっていたというエピソードも残っている。

ところで、前述の”顔で笑って心で泣いて”とは、一体どのようなつながりが?

それは、とある新人賞の予選会での一幕。この音楽賞番組は毎年夏に開催され、歌謡賞レースにおける”夏の陣”という位置付け。また、当時は予選会と本選が別々に実施されることが多く、予選会は”ノミネート大会”と呼ばれていた。予選会で選ばれし者だけが、栄光の舞台への切符を手にすることが出来るという段取りである。この”夏の陣”と呼ばれた賞番組の予選会にて、”顔で笑って心で泣いて”とおぼしき顔を見せたのがユッコだったのである。

会場は、都内の某一流ホテル大広間
大勢の業界関係者、各賞候補の歌手達でごった返すフロア
会場中央には行進用の花道

緊迫した雰囲気の中、いよいよ新人賞ノミネートの火蓋が切って落とされた。
ノミネート参加曲のサワリが10秒程度のメドレー形式となり、それをBGMに新人歌手達が花道を行進してくる。自己紹介も兼ね、自身の名前が大きく書かれたプラカードも掲げている。そして、若き小鳥たち(新人歌手)を先導するのは、その年に小学校へ入学したばかりの子供達。行進は「あ」行の青木美保嬢から始まり、「わ」行の渡辺桂子嬢で終了。これにて、総勢21名がズラリと壇上に出そろったのである。
入賞者発表は、手に汗握る”演奏方式”。これは「ご自分の曲のイントロが演奏されたら、そのまま前へ出て歌ってください」というもの。壇上にいる側も、テレビを視聴している側も…心臓に悪い方式だったのは言うまでもない。
そして遂に発表の時がやってきた。
壇上の照明が暗転、ティンパニーロールが鳴り響く!そして、スポットライトもグルグル!!
バンドマスターの指揮棒が、勢いよく振り下ろされたその瞬間…。

♪ダンッダダン

「ん?スペクター???ユッコの『リトル プリンセス』だ!」
これは、ブラウン管の前で見守っていた当時の筆者が思わず叫んでしまった一言である(笑)。
舞台中央へ出てくるユッコ…緊張気味な面持ちであるが、落ち着いているようにも見える。さぁ!喜びをかみしめ、元気いっぱいに歌うんだ!ところが…。

声がうわずり、涙目

笑みを必死に浮かべようとしているユッコ。この宵に彼女をはじめて観た人は、「なんて歌がヘタなんだ」と誤解したかもしれない(←全くもって誤った見解!)。たしかに、おぼつかない歌唱になってしまった感は否めないが。あゝ、それにしても可愛い!淡いピンク色のドレスに身を包んだ姿が実に愛らしい。おそらく男子であれば「守ってやらねば!」という衝動に駆られたに違いない。まぁ、ご本人がそれをキボンヌしていたかどうかはさておき(笑)。

顔で笑って心で泣いて

いいえ…この場では”悲しくて”泣いたのではなく”うれしくて”涙ぐんだはず。よって、同じ”泣く”でも意味合いの異なる”泣く”となり、ことわざの意味には合致せん!
実はこの新人賞開催の少し前、彼女は”前哨戦”と呼ばれた他局の賞番組にて最優秀新人賞を獲得していた。その際はデビュー曲「ファースト・デイト」で参加したのだが、受賞後の歌披露では大号泣。それこそ、顔がクシャクシャになるほどに泣いてしまったのである。
“夏の陣”でのユッコは、おそらくこのことが頭から離れなかったのではないのだろうか。人一倍几帳面で、物事に対して一途にうちこむ性格だったというユッコ。過日の大号泣が脳裏にチラつき、今回は泣かずにきちんと唄おう!と決心していたのではないかと。しかし、この宵も入賞の喜びが押し寄せて…。

顔で笑って心で泣いて

無理な笑顔で内面を取り繕うとする様は、ある意味、ソレっぽく。しかし何度も言うが”うれし泣き”である。
ちなみにこの宵、ユッコの右隣に一候補として並んでいたのはあの方。一字違いのアイドル、岡村有希子嬢である。しかし、新人賞という名の同じ舞台に立ちながら、なにやら周囲をキョロキョロと。入賞していく歌手達を拍手で称える姿がフレンドシップ!実に素敵だったのだが、一方で開き直りのようなものも? なにやら観客化していたようにも見えてしまったもの。
おそらく彼女は、その時点での立ち位置を理解していたのだろう。それにしたって、これほどまでに惨い機会はなかったであろうヨ。選ばれる可能性が限りなく低い場所に登壇しなければならなかったなんて。”頭数要員”扱いは♪酷ですぅ~全くもっておっしゃるとおり。
芸名がたまたま似たものになっただけ。松本伊代と松友伊代のようなもの?(←いいえ、違います!)。しかし、色々言われてダンッダダン。歌手としてのデビューは岡村嬢が先、芸名が付けられた時期はほぼ同じとも言われている。どちらが先人かどうかの真相など、今となっては闇の中。岡村嬢だって魅力あふれるアイドル歌手だったのである。これは声高に叫んでおかなければ。

顔で笑って心で泣いて

劣勢の中で参戦させられた”夏の陣”…それはもう、さぞかし辛いものだったろうに。

♪このまま手を取り おとぎの国へ連れてって

現実逃避したいのはア・タ・シの方。岡村嬢は心の中でこんな風につぶやいた…のかもしれないナと。

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チェリーの歌謡曲ワンダーランド 記事一覧

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プロフィール

icon_sr70&80年代アイドル、歌謡曲、ピンク・レディー、昭和ポップカルチャー好き。高円寺・円盤「鈴木啓之のミュージックガーデン」、FMおだわら「ラジオ歌謡選抜」にゲスト出演。「歌謡曲リミテッド」でコラム連載中。ブログ「昭和TVワンダーランド」の運営者です。

ハンドル名:チェリー(CHERRY★CREEK)
好きな音楽:70-80年代アイドル歌謡全般、歌謡曲、米英50-60sティーンポップ、古き良き時代のジャズボーカル、フリッパーズギターなど
好きな歌手:1960-80年代の日本で唄っていた、歌謡曲の歌手全員
好きなもの:昭和にまつわるものすべて、音楽鑑賞、レコードや昭和アイドルグッズ集め、食べ歩き、パソコン、エッセイを書くこと、昼寝
よろしくないクセ:哀愁のオリエント急行に、たま~に乗ってしまうこと 笑)
得意なもの:トーク(特に70-80年代アイドルや歌謡曲について)、丁寧な言葉で話すこと、グラフィックデザイン、文章を書くこと、英会話、料理
出身地:東京、日本
国籍:日本
生息地:オーストラリアのメルボルン(永住権)、たまに神奈川県
経歴:2015年12月「鈴木啓之のミュージックガーデン」(於:高円寺 円盤)、2016年1月FMおだわら「ラジオ歌謡選抜」第132回放送分「昭和アイドル・ワンダーランド」(ゲスト)、2016年5月 歌謡曲情報サイト「歌謡曲リミテッド」 にてコラム連載開始
「80年代アイドル☆ピンク・レディー☆昭和TVワンダーランド」
http://blogs.yahoo.co.jp/cherrycreekjp

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