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ラグジュアリー歌謡 (((80s)))パーラー気分で楽しむ邦楽音盤ガイド538

歌謡曲リミテッド スペシャルインタビュー

ラグジュアリー歌謡
(((80s)))パーラー気分で楽しむ邦楽音盤ガイド538

取材/鈴木啓之、取材・文/竹部吉晃、協力/広川たかあき 公開日:2013.04.25

歌謡曲の新ジャンル?「ラグジュアリー歌謡」とは?
今年2月に刊行された「ラグジュアリー歌謡 (((80s)))パーラー気分で楽しむ邦楽音盤ガイド538」は、これまで数多く出てきた歌謡曲ディスクガイドの中でもかなり異色の内容といえるだろう。「ラグジュアリー歌謡」という言葉自体に馴染みがなく、サブタイトルに付けられた「パーラー気分」にも、その意味はいったい何か?と首をかしげたくなる。しかし、ページをめくり、ジャケット写真を眺め、文章を読み進めていくと、当初、謎だった「ラグジュアリー歌謡」と「パーラー気分」が感覚的に理解していくから不思議だ。80年代の空気を思い出し、538枚すべての紹介を読み終わった段階で、自分の「ラグジュアリー歌謡」観が出来上がっていく。歌謡曲の奥深さ、幅の広さを実感する。そんな不思議な魅力をもったディスクガイドを監修した藤井陽一氏に「ラグジュアリー歌謡」の極意を聞いた。インタビューは、「ラグジュアリー歌謡」の要塞ともいうべき藤井氏の自宅で行った。

--そもそもこの本「ラグジュアリー歌謡」を作ったきっかけから教えてください。

藤井:音楽で一冊の本を作るなんてことは夢の夢だったんです。小さいときからコンピレーションのカセットを作るのが大好きで、その延長線で数年前からユーストリームを使って3時間くらいの番組をやっていました。自分を追い詰めるような形で、その場の雰囲気で洋楽と邦楽をつないでいろんな音楽をかけていたんです。そのときに、改めて自分の好きな音楽を聴いてみて、両者の音が意外と近い、ということを感じたんです。きっと、好きなもの同士で繋がっているんじゃないか、という気がしてきたんです。それを聴いていた友達からも「違和感がない」って話になって。何年も聞いていた音楽なのに再発見が多かったんです。

ラグジュアリー歌謡
(((80s)))パーラー気分で楽しむ
邦楽音盤ガイド538

藤井 陽一 (著、監修)
2013年2月15日発売

DU BOOKS/¥2,310(税込)
http://diskunion.net/dubooks/ct/detail/DUBK013

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--でも実際にそれを書籍にするにあたって、いろいろ苦労も多かったのではないかと思いますが。かなりの大著ですし。

藤井:前々から山川恵津子さんが関わった作品をまとめた冊子を作りたいという気持ちはあったんです。それで、ちょうど山川さん特集をユーストでやったときに編集者の知り合いから「本を作りましょう」という話をもらったんです。そこからすべてが始まった感じです。

--山川恵津子さんありきの企画だったんですね。

藤井:収録した作品を振り返ってみると1985年あたりからの作品が多い。作品解説を書いていても、1984年くらいからジワジワと当時の記憶がよみがえってきました。ぼくは1973年生まれなので、そのころから音楽への自我が芽生えだしたんでしょうね。だから、85年になってくると結構スラスラ当時の思い出を書けました。とは言っても、「夕やけニャンニャン」は普通に見ていたのに、おニャン子クラブとかの曲を聴いてもあまり分からなくて。でも番組でたまにかかる、シングル以外の曲「ポップコーン畑でつかまえて」なんかを聴くと、アニメの「魔法のスターマジカルエミ」や魔法少女シリーズの世界観にも似ていて、すごく気になっていました。後からどちらも山川さんの作編曲だと知って納得したんです。20代の頃に後追いで出会った、トット・テイラー主宰のコンパクト・オーガニゼーションの作品の音やアートワークが大好きで、それらを聴いた後におニャン子クラブのアルバムを聴いた時は本当にゾクゾクしましたよ。いいなぁ〜って思った曲がことごとく山川さん作品で(笑)。自分の好きな曲がひとつの線で繋がった感じがしました。

--トット・テイラーの名前が出ましたが、藤井さんは最初のころは洋楽リスナーだったとお聞きしました。しかもかなり熱心な。

藤井:アイドルポップにはまっていったのは20代に入ってからです。当時は特にアイドルファンということもなくテレビやラジオから流れている曲を洋楽、邦楽関係なく聴いてきた感じです。洋楽をどっぷり聴いた耳で、レコードに針を落としてアイドルのレコードを聴くと、聴こえ方が全然違うと分かりました。普段好んで聴いていたニュー・ウェイヴやネオ・アコースティック〜プログレやAOR〜フュージョンタッチな箱庭的クロスオーバー音像が聴こえてきたというか。そこからアイドルのシングルレコードを買い集めるようになりました。そして、アレンジャーとシンセ・プログラマーの関係性に凄く興味を持つようになりました。

--「ラグジュアリー歌謡」という言葉はどういうところから生まれたのですか。

藤井:ラグジュアリーという言葉は、前からよく使っていたんです。あるとき、ダスティ・スプリングフィールド版「アム・アイ・ザ・セイム・ガール」を聴いた友人が一言「これはラグジュアリーだよね」と言って、すごく感心したんです。奇抜さはないけど、背筋がピンとしていて上品でお洒落な感じ。それがダスティ・スプリングフィールドのボーカルに相応しい言葉だなって。それからラグジュアリーって言葉をあちこちで使うようになりました。とは言いましても、もともとはそれほど深い意味もなく付けたんです(笑)。

--徐々に言葉の意味が分かってきました(笑)。

藤井:最初は「パーラー歌謡」にしようという案もあったんです。幼稚園くらいのときに、母親に連れられて資生堂で買い物した後、高島屋のパーラーに入って、帰りに同じ階のレコード店でドーナツ盤を買ってもらうという流れがあって。その思い出がずっと残っていて、今もパーラー的な鮮やかな色彩のものが好きなんです。

--今回紹介されているジャケットの色味を見るとまさにそんな感覚がありますね。

藤井:選んだ楽曲は年代別、さらに五十音別にと分類したんですが、掲載したジャケットを見ると配色とか妙な統一感があるって言われます。やっぱりそこに自分の趣味嗜好が出ているんでしょうね。音楽に限らず欧州系のものが好きみたいで、モダンクラシカルで素っ頓狂なテイストに惹かれるようです。

--細かくカテゴリー分けしていないのも逆に奏功している気がします。

藤井:今回、一応ぼくが監修者という立場になっていますが、執筆していただいたみなさんには"なんとなく"のイメージを伝えて自己で選んでいただき、選んだ曲にあれこれ言うことは一切しませんでした。実際、ぼくが聴いたことのない曲も載っていますし、逆に自分も楽しめるなぁとわくわくしていました。根っからの近鉄ファンなので、いてまえ打線的な仰木スタイルで行きました(笑)。執筆者もちょうど9人なので、最強のラインナップが組めたと思います。

--今回の書籍、そして自宅のレコードを拝見するに、かなりのコレクターと見受けられます。いつ頃から本気でレコードを買い集めるようになったのでしょうか。


『Les filles』Qlair
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藤井:3歳くらいからレコードに親しんできましたが、本格的に集めるようになったのは高校生になってからです。バイトしたお金でザ・ジャムやザ・スミスとかパンク〜ニュー・ウェイヴ系のレコードを買ったりしていました。初めて好きになったアイドルがキャンディーズで、その後かなり経って乙女塾のQlairにはまって、それが自分の中でひとつに繋がりました。仲良さそうなハーモニー聴いていると、自分の中でキャンディーズなものを感じて、さらに洋楽的な雰囲気も漂っていました。

--Qlairも同書のキーワードですよね。

藤井:音楽的にコアな人たちがQlairのスタッフに集まっていたことは、CDのブックレットに載っていたクレジットである程度知っていたんですが、今回、篠崎恵子さんにインタビューをして改めて、音楽性の高さやこだわりを再認識しました。Qlairの他、鈴木トオルや鈴木祥子も篠崎恵子さんプロデュース作品なんですが、これも色合いが全部似通っているんです。どことなく英国っぽいというか。それも森の中の少女って雰囲気を感じました。当時は森ガールなんて言葉なかったですが。彼女たちはいち早くその感覚を取り入れていたのかもしれません。

--本の中で山川恵津子さんと森達彦さんの対談が実現しています。

藤井:今回、山川さんと対談していただいた森達彦さんとは以前から顔なじみだったんです。ひょんなところから偶然知り合いまして。それで、最近になって自分の好きな音楽を振り返ってみたら、森さんがプログラマーを担当している楽曲が本当に多くてびっくりしました。匂いみたいなものがあるんでしょうね。

--ラグジュアリーというのは曲調ではなくアレンジについての印象という意味合いが強いんですね。

藤井:そうですね。作曲者よりもアレンジャーでラグジュアリーな感じが出ると思うんです。「好きな作曲家は?」と聞かれてもなかなか出てこない。でも「好きなアレンジャーは?」と聞かれたら何人でも思い浮かびます。そういう意味では、山川さんこそがラグジュアリーだと、自分の中では思っています。山川さんは自己顕示欲が全くない人なんです。プロでやっている人は多かれ少なかれそういうものを前に出す人が多いんですが、そうなると作っている音楽も違ってくるように思うんです。

--あと大滝詠一さんのナイアガラ・サウンドも少ないですよね。

藤井:そうですよね。周りからも「ナイアガラ関連が入ってないのはどうしてなのか?」とよく聞かれました(笑)。今の自分にはまだナイアガラ吸収できてないんで、いま書くと背伸びになってしまう気がするんです。あと3年早く生まれていたら、どっぷりはまってしまったかもしれないですね。

--そんな藤井さんにとって、思い入れのある盤は何になるんでしょうか。

藤井:それはやはり、小学時代に出会った飯島真理のアルバム「midori」と大江千里のアルバム「未成年」ですね。当時、貸レコ屋で借りてカセットにダビングして聴きまくりました(笑)。飯島さんは「マクロス」からファンになったってこともあるんですが、どちらのアルバムも編曲を清水信之さんが担当しているんです。清水信之さんは自分にとってとても重要な方で、後に知らず知らずアレンジャーに関心を持ったという意味でも記念すべき2枚です。しかも、この二枚のジャケットはすごく似ているんです。発売時期も近く話題になりました(笑)。

--本当に!


『midori』飯島真理
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『未成年』大江千里
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藤井:飯島真理さんは今でも好きなアーティストです。

--本当に藤井さんの個人的主観で選ばれたものが「ラグジュアリー歌謡」の定義なんですね。

藤井:"定義"というよりかは"感覚"みたいなもんですかね。思い返してみると、子どものころから今までずっと、自分の感覚に合ったものを聴いてきたこともあって、なかなか言葉にならないものがあります。この本の「はじめに」という文章も、今みたいに色々訊かれたことに答えたものを文字に起こしたんです。改めて読んでみて、自分の考えていることがわかったような気がしました(笑)。なので、この本に書いてあることは、ある程度自分で吸収したうえで出てきたものばかりです。だから、どうしても80年代が中心になってしまいますね。そこに参加していただいた8人の執筆者のラグジュアリー感が交わって、微妙に違う世代背景の音像がパノラマ的に反映されているような感じというか(笑)。

--実際に本を出されてみた感想はいかがですか。

藤井:正直、この本が店頭に並ぶ前の晩はそわそわして寝られませんでした。見本版を手にしても、まともに見られなかったので、枕の横に置いていたぐらいです。趣旨が理解されるまで時間が掛かる覚悟もしていたので、発売前からアマゾンでチャートが上がったりして、評判になったことも予想外でした。発売して1ヵ月が経った頃に、ようやく客観的に見られるようになりました。

--紹介されているレコードはレアなものばかりなのに、マニアックな匂いがしないからなのではないですか。

藤井:意外にも主婦から人気があるみたいなんです。あのころ「オリーブ少女」っていう言葉が流行していましたけど、それよりも少しマイナーだった「PeeWee」を読んでいたような方。その辺の波長が合っている方が読んでくれている気がします。あとは、当時、乙女塾、Qlairのファンだった人とかが喜んでくれているようです。

--この本からQlairの再評価の動きがありそうですね。

藤井:2005年に出たベスト「Qlair Archives」にQlairの全楽曲が収録されているので、ぜひ聴いてみていただきたいです。本当に素晴らしいんです。


『Qlair Archives』Qlair
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--この本を機に「ラグジュアリー歌謡」という言葉が独り歩きしていきそうです。

藤井:この本の感想で、よく言われるのが「ページのどこからでも読みはじめられる」ってこと。これは最初から考えていたことなんですが、どこから読んでもそこを入り口にして、話を広げられる構成になっているんです。ちょっと後付けっぽい言い回しですが……(笑)。だから、読者からの意見をもらってなるほどと思うことも多いですね。世代も音楽体験もばらばらの方が読んでくださっているようでみなさん、この本をきっかけに、自分なりのラグジュアリー歌謡を等身大に"お茶の間"化して下さっているようで、嬉し楽しいですね(笑)。

藤井陽一

石立ドラマ『雑居時代』放送開始日73 年10 月3 日大阪生まれのB型(O+B)。初恋はランちゃん(伊藤蘭)。
幼少期から近鉄バファローズと青春時代を過ごし、20 代から大阪~東京の中古レコード屋勤務の傍ら、エム・レコードなどのCD再発の企画やライナーを少々担当。
永遠のヒーローは西本幸雄さんとパーマンとLAUGHIN' NOSE のPON さん。好きなお笑いトリオは怪物ランド。

ブログ「(((FgeeSoul)))」:http://yaplog.jp/fgeesoul/

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