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デビュー40周年を迎えた“tutumikko” 太田裕美

歌謡曲リミテッド スペシャルインタビュー

デビュー40周年を迎えた“tutumikko”
太田裕美

取材・文/長井英治 公開日:2014.05.22

今年デビュー40周年の記念イヤーに突入した太田裕美が、筒美京平の楽曲を取り上げたカバーアルバムを発表した。その名もずばり『tutumikko』。筒美京平と太田裕美といえば、「木綿のハンカチーフ」をはじめとして、「雨だれ」「赤いハイヒール」「最後の一葉」「しあわせ未満」「九月の雨」などが知られているが、これまで多くの歌手に多くの楽曲を提供してきた名作曲家、筒美京平が最も多く楽曲を提供した女性歌手が太田裕美だという。その相性の良さがうかがえるとともに、太田裕美の声のキュートな魅力が最大限に生かされた、筒美京平への愛の溢れるアルバムとなっている。

--このたび、筒美京平さんの楽曲をカバーしたアルバム『tutumikko』をリリースされました太田さんですが、太田さんと筒美京平さんといえば名曲「木綿のハンカチーフ」を思い出さないわけにはいきません。

太田:もうかれこれ38年前の曲になりますね。いまでも若いアーティストの方もカバーしてくださっていたり、多くの人にカラオケで歌われていますので、太田裕美のことは知らなくても「木綿のハンカチーフ」は知ってくれてます。いまでもみなさんに愛されている曲だなと実感する場面が多いですね。

--本当にそうですよね。ロック系のアーティストからアイドル歌手まで幅広くカバーされています。

太田:歌手としてはとても光栄なことです。

--「木綿のハンカチーフ」をいただいた日のことは覚えていらっしゃいますか。

太田:4枚目のシングルのレコーディングの前に、3枚目のアルバム「心が風邪をひいた日」の制作に入ったのですが、「木綿のハンカチーフ」はアルバム用にレコーディングした最初の曲だったんです。曲を聴く前に松本隆さんが書かれた詩を見せていただいたんですが、その詩は原稿用紙2枚にわたって書かれていて、「とても長い詩だなー」と思ったのが第一印象でした(笑)。男性と女性の掛け合いのような詩も今までにないものでしたし……。そのあとにオケを聞かせてもらって、レコーディングをしました。そのことは、まるで昨日のように鮮明に覚えています。

--アルバムの中の1曲だった「木綿のハンカチーフ」が、なぜシングルになったのでしょうか。

太田:デビューシングルから3枚目のシングルまでのわたしの曲は、ピアノの弾き語りというイメージがあったと思うんです。でも「木綿のハンカチーフ」はそれまでにないカントリーロック的なアレンジだったのがとても新鮮で、レコーディング中に「次のシングルはこれしかない!」ということになり、アルバムに収録されたものとはアレンジを変えてシングル曲としてレコーディングすることになったんです。

--今でも色あせない名曲ですよね。そのほかにも太田裕美さんは、デビュー当時から筒美京平さんの曲を歌われてきました。

太田:筒美京平先生が「雨だれ」を作ってくださらなければ、今の太田裕美は存在しなかったと思います。筒美京平先生は多くの歌手に多くの曲を提供しているなかで、女性歌手に提供した曲はわたしがいちばん多いとのことで、まさに太田裕美というアーティストを作ってくださった恩人ですね。筒美先生には足を向けて寝られません、頭を向けて寝ます(笑)。

--そんな所縁の深い筒美京平さんの数ある楽曲から選んだ曲をカバーしたアルバム『tutumikko』を制作しようと思った理由はどういうところからでしょうか。

太田:今年デビューから40年目を迎えるので、その記念になるような作品を作りたかったんです。以前、松本隆さんが作詞家30周年のときに、松本隆さんが歌詞を書いた曲を中心に構成したカバーしたミニアルバム「CANDY」を出したことがありました。今回は自分の40周年のタイミングで、筒美京平先生の数ある名曲の中からカバーをしたアルバムを作りたいと思ったんです。

--アルバムタイトル『tutumikko』は文字通り「筒美っ子」という事ですが、とてもインパクトがあるタイトルですよね。

太田:本当だったらスペルは「tsu‐tsu」なんですが「tu-tu」のほうが見た目にもキッチュでインパクトがあるでしょ(笑)。このアルバムを出そうと思ったときから、タイトルは「tutumikko」にしようと決めていたんです。

--選曲にはそうとう苦労されたんじゃないですか。

太田:大変でした。聞くところによると、筒美京平先生の楽曲は2700曲くらいあるそうなので……。ですから、スタッフ全員で15曲~20曲くらい持ち寄って、その中から喧々諤々して(笑)、最終的に10曲に絞り込みました。

--実際、レコーディングされて苦労したことはありましたか。

太田:今回歌った曲は半分くらいが男性シンガーの曲なので音域が広いんです。そういう意味では歌入れが大変でしたが、アレンジをしてくれた宮川弾さんが、太田裕美のことを考えて丁寧にアレンジをしてくれたので、筒美さんがまるで私のために書き下ろしてくれた曲を歌っているような感覚で歌えたんです。

--全体的に太田裕美さんのチャーミングな歌声に合わせた可愛らしいアレンジの曲が多いですよね。楽器の音色も優しい感じです。

太田:レコーディングはすべて楽しかったです。

--「真夏の出来事」(平山三紀)は70年代の名曲ですね。

太田:デビュー前に、デビュー曲「雨だれ」のキー合わせで、筒美京平さんの所に行ったとき、私の前に来ていたのが平山三紀さんでそのときに初めてお会いしたのを思い出します。この曲も大好きな曲ですが、私にしてはロックっぽいアレンジなのでとても新鮮でした。

--「Romanticが止まらない」(C-C-B)は80年代の名曲ですが、選曲もアレンジも意外で驚きました。

太田:アレンジの宮川弾さんが「この曲は絶対に歌ってほしい!」と強く薦めてくれた1曲なんです。最初私は、オリジナル曲のイメージがあまりにも強いので難色を示していたんですが(笑)、宮川さんが「いいメロディだから裕美さんに絶対に似合う」と言ってくださって、背中を押してもらいました。結局、筒美京平先生のメロディは、どんなアレンジにも耐えうる、素晴らしいものなんだということをこの曲にチャレンジしたことで再認識しました。

--素晴らしいカバーになっていると思います。「強い気持ち・強い愛」(小沢健二)、「人魚」(NOKKO)は90年代を代表する名曲ですが、何故この2曲を歌おうと思われたのですか。

太田:意外かもしれませんが、この2曲は私が今回絶対に歌いたいと思った曲なんです。90年代、子育てをしていたときによくラジオを聴いていて、そこでよく耳にしていた曲だったんです。最初は普通に「いい曲だな」と思っていたんですが、後から筒美先生の曲ということを知ってすごく驚きました。とくに「強い気持ち・強い愛」は当時の小沢さんの上昇気流に乗っているような雰囲気がとっても好きでした。まさか、当時は自分で歌うことなんてまったく想像もしていなかったんですけどね(笑)。

--太田裕美さんは、筒美京平さんの楽曲を歌いつつも、吉田拓郎さん、ユーミン、大滝詠一さんなどの曲も歌われているわけですが、筒美さん以外の作家の曲を歌うことで、改めて筒美京平さんの作家性というものを感じる場面もあったのではないでしょうか。

太田:『tutumikko』には60年代から90年代までの筒美先生の曲が収録されているんですが、どの曲も当時の先端のサウンドやエッセンスが自然に取り入れてられているんです。アーティストの個性を生かしつつも、実は筒美ワールドは曲の中でしっかりと確立されているというのは、今回のレコーディングを通して改めて気づきました。

太田裕美
『tutumikko』

2014.4.2発売
DDCZ-1938 ¥2,800(税込)
amazonで購入する

収録曲:
1. タイムマシーン
2. 真夏の出来事
3. Romanticが止まらない
4. ガールフレンド
5. 夏のクラクション
6. 人魚
7. さらば恋人
8. レイン・ステイション
9. 私は忘れない
10. 強い気持ち・強い愛

--話は変わりますが、昨年末に大滝詠一さんがお亡くなりになりました。太田裕美さんにとって大滝さんはどのような存在でしたか。

太田:お亡くなりになって、改めて大滝詠一さんの偉大さに気づかされたような気がします。私が、もっと早い時期にそのことをちゃんと理解していたら、大滝さんから学ぶべきことはもっとたくさんあったんだろうなと思います。そんな私がこれからできることは、大滝さんから提供していただいた3曲を大切に歌い続けていくことだと思っています。

--「さらばシベリア鉄道」を歌うことになったいきさつはどういう経緯だったんですか。

太田:当時の私の担当ディレクターが大滝さんのディレクターでもあって、「今、大滝君がレコーディングしているから遊びに来なよ」と言われて遊びに行ったのがきっかけです。そのときに大滝さんから「この曲はどちらかというと女性向きの曲な気がするから、太田裕美が歌ってみなよ」という会話から、レコーディングすることになったのが「さらばシベリア鉄道」なんです。結果的に『A LONG VACATION』が発売される前に、私のほうが一足早くシングルで発売することになったんですが、あの日に、スタジオに遊びに行かなかったらこの曲は私が歌っていなかったかもしれませんね。

--大滝さんの作品の中で太田さんは重要なアーティストでいらっしゃいますよね。

太田:目に見えない繋がりがあることを強く実感しますね。今回のアルバムのプロデューサーの宮川弾さんは小学生のとき、「A LONG VACATION」を聴いて、そこに収録されている「FUN×4」の「散歩しない?」という私のコーラスを聴いて、太田裕美の存在を知り、私の声に興味を持ってくれたそうなんです。

--そうなんですね!

太田:宮川弾さんがプロの音楽家になられて、彼のアルバムに私を呼んでくださったことからのご縁で今回アレンジをお願いすることになったんです。「A LONG VACATION」に私が参加していなければ、宮川さんも私の声に興味を持たなかったかもしれませんし、そうしたらこういう形で知り合うこともなく、この『tutumikko』のアレンジも違う方にお願いしていたかもしれません。大滝さんが繋げてくださったご縁を感じずにはいられません。

--なるほど。そうだったんですね。大滝詠一さんと最後にお仕事をされたのはいつですか。

太田:2009年にリリースされた『A LONG VACATION from Ladies』というアルバムで、私が「FUN×4」をカバーしたときに大滝さんに「散歩しない?」の部分で参加していただいたんです。それが結果的に、大滝さんの最後のレコーディングした声だったそうです。

--大滝さんを参加させてしまうのは、裕美さんだからできたことでしょうね。

太田:レコーディングの前に、大滝さんとご飯を食べたときに大滝さんに「「4×FUN」を歌いなよ」と言われたのでじゃ「“散歩しようよ!”は大滝さんが歌ってね」と私が言ったんです(笑)。それでレコーディングが実現したんです。キーが低かったからちょっと歌いにくそうでしたけど。そのときはとてもお元気だったので、まさかという感じでした。

--そういえば、太田裕美さんの40周年記念コンサートに、松本隆さんと筒美京平さんが見にこられたそうですね。

太田:私の東京での40周年コンサートの日が3月21日で、偶然にもその日は大滝詠一さんのお別れ会だったんです。私はうかがえなかったんですが、松本隆さんがその会のために、神戸から東京にいらっしゃっていて、お別れ会のあとに私のコンサートにいらしてくれたんです。そうしたら、筒美京平さんを誘って一緒に見にきてくれたんです。とてもうれしかったです。私のコンサートが3月21日だったというのも、大滝さんがお二人を引き合わせてくれたんじゃないかと思えてしまいます。

--最後に、最近ではすっかり太田さんのライフワークとなっているなごみーずについての話を聞かせてください。なごみーずのコンサートは200回公演が迫っているそうですね。

太田:そうなんです。そもそも、私のコンサートに正やん(伊勢正三)がゲスト出演してくれたことがきっかけで、私もお礼に正やんのコンサートにゲスト出演したんです。そのうちに大野さんも参加することになり、いつしか3人でコンサートをするようになりました。まさか、グループになるとも思っていませんでしたし、こんなにたくさんコンサートをやるようになるとも思っていませんでした。なごみーずという名前は私がつけたんですけど、ステージから見えるお客さんの、なごんでいる雰囲気がとてもよかったのでこのグループ名になったんです。

--全国でなごみーずを待っているお客さんがたくさんいらっしゃると思います。

太田:大野さんが年長なので「大野さんが倒れたら、なごみーずは解散だからいつまでも元気でいてね!」って冗談でよく話しています。おじいちゃん、おばあちゃんになっても茶飲み友達的になごみーずを続けていければと思っています。

--ファンの方にメッセージをお願いします。

太田:今回この『tutumikko』を作ってみて改めて、新鮮な気持ちで大好きな歌を歌えることはなんて幸せなんだろうと思いました。これからも「雨女の恩返し」という気持ちで(笑)、真摯な気持ちで歌を歌いつづけていきたいと思っています。

太田裕美

1955年東京都生まれ。上野学園音楽学校声楽科声楽コース在学中に、スクールメイツのオーディションに合格。NHK『ステージ101』のレギュラーメンバーをへて、74年「雨だれ」でデビュー。「たんぽぽ」「木綿のハンカチーフ」「九月の雨」など立て続けにヒット曲を出す。80年代に充電のためニューヨークに滞在。帰国後も幅広い音楽活動を経て、92年から音楽活動を再開し、ライブ活動を中心に活躍。近年、伊勢正三さんと大野真澄さんと共に結成したユニット「なごみーず」で精力的に活動を行っている。2014年、デビュー40周年を迎えた。

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